問題がここまで大きくなったのは医師法第21条の解釈をめぐって、平成6年に日本法医学会が「異状死」に対する「異常な解釈」をしたことに始まる。簡単に言えば「はっきりとした病気による死亡以外の死亡は全て異状死とする」ので警察に届けなければいけないとなる。だから、手術などの危険を伴う正当な医療行為であっても術中や術後に大出血を起こして死亡すれば当然のごとく届けなければならなくなった。その結果の一つが大野病院の前置胎盤剥離による出血死事件だよ。
>手術で癒着した組織をはがす際に大出血を起こす--などのケースは「やむを得ず発生した合併症」とみなし、届け出の必要はない。
などというが、それなら大野事件のケースは届けなくても良いし「やむを得ず発生した合併症」なんだから逮捕されたり、禁固一年の求刑を受けたりするのはいかがなものか。今からでも遅くはないので介入したらどうですか。それで検察が起訴を取り下げれば信じてあげますよ。
厚労省の言う第三者機関を作ったところで、遺族が警察に訴えれば今までと同じで警察が直接逮捕しに来るよ。異状死の解釈が警察庁・検察庁と厚生労働省との間でどんなふうに折り合ったのかしれないけれど、ここをはっきりさせてもらわないとどんな制度を作っても結局はおんなじ結果が待っている。
異状死の解釈を再定義して、故意でない限り、重大な過失がない限り警察は入り込めない事故調査委員会を作ってください。日本だけですよ、こんなことしてるのは。このまま押し通すのなら、そのうち医師なんて職業は日本からなくなってしまうよ。
参考までに臨床の主だった12学会が協同で声明を出していますのでごらんください。
{診療に関連した「異状死」について}
http://mainichi.jp/select/science/news/20080404ddm001010029000c.html
厚生労働省は3日、医療死亡事故の原因を究明する第三者機関として10年度設置を目指している「医療安全調査委員会(仮称)」の最終試案を公表した。調査対象とする事故の範囲は「医療過誤か、合理的説明がつかない死亡」に限定し、死亡の危険を伴う正当な医療行為による事故を除外した。医療機関は調査委への通報が義務化される代わりに、医師法改正により警察への通報義務が不要になる。厚労省は試案について一般からの意見を募り、法案を今国会にも提出する。
調査委は、国土交通省に置かれた航空・鉄道事故調査委員会の医療版で、医療関係者や法律家らで構成する。刑事・民事裁判に委ねられていた真相解明を専門家が担い、再発防止に役立てる狙いがある。国は訴訟リスクが減ることで、医師不足対策の効果もあると期待している。
届け出の範囲は、医療関係者らに「過失がない死亡事故まで調査対象になると医療が萎縮(いしゅく)する」との声が強いのを受け、対象を絞った。厚労省の例示では▽内視鏡検査で消化管に穴を開けてしまう▽手術で癒着した組織をはがす際に大出血を起こす--などのケースは「やむを得ず発生した合併症」とみなし、届け出の必要はない。厚労省は年間2000~3000件が調査対象になると推計する。
医療機関からの届け出や、遺族からの調査依頼があると、調査委は医療や法律家のほか、患者側代表として有識者も入る調査チームを事案ごとに設置。立ち入り検査の権限を与える。【清水健二】
毎日新聞 2008年4月4日 東京朝刊
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