2008年6月13日金曜日

日雇い派遣を原則禁止、厚労相が法改正案提出を表明

 日雇い派遣を禁止というのは労働者を守る点で良い事だと思うけど、これだけを実行しても社会的には問題が多いと思う。

 この制度をうまく使って大もうけをしている大手企業は正規雇用にできるだろうけど、中小零細企業のほとんどはすべての社員を正規雇用できる経営環境にない事は明らかだ。

 たとえば日本の製造業の下支えをしているのは安い労働力としての派遣社員や、研修の名目で受け入れている中国など外国からの研修生たちだよ。

 具体例を挙げると、「ミズノ」のスポーツ用品の縫製をしている東北のある村の小さな縫製工場では、かつて10台あまりのミシンを稼働させていたけど単価の切り下げで賃金を低くしないと経営はやっていけない。日本人労働者は次々辞めていき今は中国からの研修生が3人いるだけで、彼らが帰国すれば閉鎖するしかない。彼ら(3人とも女性)の一ヶ月の賃金は一日12時間働いて「10万円」!

 近畿のある町工場では、大手メーカーが使う生産設備の部品の金型を作っている。製品はとても品質に優れていてこれがないと大手メーカーは生産に支障を来すという。しかし、社長と少数の日本人熟練工の他は数人の中国からの研修生しかいない。日本人の若者は3K+低賃金の職場をきらって雇う事すらできない。貴重な技術の伝承はできず、いずれ工場をたたむしかないと社長は悲観的になっている。(これらは、昨年末にテレビで放映していた’07年度優秀ドキュメンタリーの内容)

 私の勤める事業所でも合理化をしないと、とても経営が成り立たなくなりいくつかの部門を外注化した。派遣社員も導入した。そして何とか経営が軌道に乗り始めた途端に政府は社会保障費の削減は必要だと称して公的に支払われる報酬単価を下げてきた。再び振り出しに戻ったよ。これが中小の経営の実態。

 日曜日の東京・秋葉原の無差別殺人の犯人も派遣会社の社員で、本人自身の問題もあるみたいだけれど将来の見通しが立たなくなった事が彼を追いつめたとの見かたもある。

 なぜ、日雇い派遣が起こるようになったかといえば、財界の強い要請を受けて1999年に「派遣労働の原則自由化」、2004年の「製造業への解禁」が行われたからだ。

 これらの政策は新自由主義経済政策の元で様々な規制緩和が行われた中の一つだけれど、今の社会は大企業が儲けるだけもうけてその儲けを社会や社員に還元するでなく、外国の投資家などの株主へ還元する事をその企業目的としている。政府はその後押しをずっとしてきたんだよね、小泉サン。

 これが行き過ぎた資本主義の暴走、新自由経済主義のもと市場に全てを委ねた結果だよ。

 で、舛添大臣が「日雇い派遣を原則禁止」しても根っこが変わらないのでこの社会が良くなるとはとても考えられない。

 もっと根っこのところから考え直さないとね。






日雇い派遣を原則禁止、厚労相が法改正案提出を表明
(2008年6月13日13時53分 読売新聞
 
舛添厚生労働相は13日の閣議後記者会見で、「日雇い派遣については、やめるような方向でやるべきだと思っている」と述べ、秋の臨時国会に日雇い派遣の原則禁止を盛り込んだ労働者派遣法改正案の提出を目指す考えを明らかにした。


 舛添厚労相は会見で、「メーカーなどでは常用雇用が普通で、基本的には日雇い派遣はいかがなものか」とし、通訳などの専門的な業種は除いた上で、製造業などへの日雇い派遣を原則禁止したいとの考えを表明。

 「日雇い派遣はあまりに問題が多い。かなり厳しい形で考え直すべきで、労使の意見も聞いた上で、秋には法律の形できちんと対応したい」と述べた。

 労働者派遣法をめぐっては、厚労省の労働政策審議会の部会で改正案が論議されたが、規制強化を求める労働側と、さらなる規制緩和を主張する経営側との溝が埋まらず、昨年12月に議論をいったん中断。日雇い派遣についても、禁止を求める労働側と継続を主張する経営側が対立していた。

 部会での議論が中断後、厚労省は日雇い派遣について、労働時間や賃金などの労働条件を労働者に書面で示すことや派遣料金の公開を派遣元に求める指針を出す一方、識者の研究会で派遣のあり方を検討している。民主党は日雇い派遣の原則禁止を盛り込んだ改正案を作成。自民党も派遣法改正について検討している。

 派遣については、今月6日に開かれた政府の社会保障国民会議で、福田首相が「派遣労働者を守る制度が空洞化することは絶対に回避しなければならない。さらなる取り組みを直ちにお願いしたい」と述べ、舛添厚労相に早急な対策強化を指示していた。

 日雇い派遣をめぐっては、日雇い派遣大手「グッドウィル」が違法派遣を繰り返していたとして事業停止命令を受けたほか、「ワーキングプア」の温床と指摘されるなど社会問題化しており、労働組合などから規制強化を求める声が高まっていた。

(2008年6月13日13時53分 読売新聞

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