2009年2月23日月曜日

医師研修見直しに疑問あり

2004年度から現行の卒業後の医師研修制度に変わった。

当初の目的は専門科に偏らない幅広い知識と技術をもった総合的な診療のできる医師を育てようということだったはず。

厚労省はなかなかやるじゃないと思っていたのだが、今回の見直しの内容を見ると顕在化した「医療崩壊」を前に本来の趣旨を忘れてしまったらしい。

最近の厚労省は稚拙な施策をつぎつぎと出して現場を困らせるのはお得意だけれど、今回は医療の根幹にかかわることだけにもっとよく考えて欲しい。

単に医師の数だけ増やしても意味がない。進路を法律で縛るのも意味がない。

どうして、こんなことになったのかの分析をしっかりとしないから、稚拙な政策しか出てこない。

もう一度立ち止まって、国民が安心して医療を受けられるようにするにはどうすればいいのかをよく考えるべきだ。

机上の空論を振りかざすのはいい加減に止めて欲しい。




中日新聞 CHUNICHI WEB

【社説】
医師研修見直し 本末転倒の場当たり策
2009年2月23日

 厚生労働、文部科学両省がまとめた二〇一〇年度からの医師臨床研修制度の見直し策は、当面の医師不足対策にすり替えられ、本末転倒だ。国民がどんな医師を求めているかを忘れてはならない。
 〇四年度から始まった研修制度では国家試験合格後の二年間に内科、外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科、救急の七診療科の研修を必修としている。
 見直し策では必修を一年目に内科(六カ月以上)、救急(三カ月以上)、二年目に地域医療研修(一カ月以上)にとどめ、それ以外は二診療科を選択する「選択必修」になる。
 現行通りに各科を回ることも研修病院の判断でできるが、特定の診療科だけの研修でも済む。この結果、制度上の研修期間は二年間だが、実質的には一年以上を専門医として研修に特化できる。
 見直しの背景にあるのは、出身大学に残らない研修医が増え、大学が関連病院へ交代で派遣する医師を確保できなくなったことだ。これが医師不足を深刻化させたとの不満は地方の大学ほど強い。
 研修期間を短縮し、さらに都道府県ごとに研修医の定員枠を設けて大都市への集中を減らし、大学に残る医師を増やそうというのが制度見直しの大きな狙いだ。
 地方の医師不足を考えれば理解できるが、研修制度ができたのは、これからの医師には専門に偏らず救急、地域医療、いくつもの疾患を持つ高齢者の増加などにも対応できる幅広い臨床能力を身につけてほしいという国民の要望からだった。研修医の生活保障に公費を投入するのもこのためだ。
 にもかかわらず研修期間を実質的に短縮するのは、制度を設けた本来の趣旨に反する。
 今回の見直しで、出身大学に残る研修医が増え、地域医療の水準が上がるかどうかも疑問だ。
 大学病院の研修医が減ったのは、待遇が悪いうえに魅力ある研修プログラムに欠けているとの指摘がある。今回の見直しで大学に残る研修医が多少増えても、その後専門医としての腕を磨く環境になければ二年後には別の医療機関に移動してしまうだろう。
 医師不足や地域偏在、診療科による偏在の是正は、研修制度の手直しで解消する問題ではない。
 国民一人当たりの医師数を計画的に増やすとともに、卒前教育を含めた医師養成のあり方、医学界全体で診療科ごとに必要な専門医数の算定や資格要件を明確にするなど総合的に取り組むべきだ。

0 件のコメント: