2008年7月21日月曜日

当直あけの朝

久々の当直があけた今朝。ほんとに久しぶり。

思えば、ちょうど2週間前の今時分のことでした。

実は、深夜に亡くなった私の母の病理解剖の助手を務めていたのです。

持病が悪化して、私の勤めている病院へ入院して一ヶ月目のことでした。

入院後も病状は徐々に悪化して、亡くなる間際には意識もほとんどなく穏やかな最後でした。



私が勤めている病院は、いわゆる「臨床研修指定病院」で研修医もいるため亡くなった際には病理解剖をお願いしているのですが、なかなか応じてくださるご家族はいないのが現状です。

で、私の立場として母の病理解剖は当然のことと考えて死後の剖検を申し出ていました。

朝、8時開始ということで剖検室にいくといつもお世話になっている大学の病理学教室の教授がお一人でいらっしゃいました。(いつもは助手の技官と二人でします)

「今朝は大学の病理解剖と重なってしまったので、私が一人でします。大学優先なので助手(技官)は大学の方の手伝いをしています」とおっしゃるではありませんか。

「それでは、私が助手をします」と言うほかなく、亡くなってから7時間あまり経った遺体にメスが入りました。

「遺族が剖検の助手というシチュエーションは実際にはありえんよなあ」と思いつつ、なんとか気力を振り絞って最後まで務めました。

実際に解剖して初めて、どれだけ母の体が蝕まれていたかがはっきりとわかりました。

そのうえで息子としてだけでなく臨床医としてこの病院での診断治療の経過を踏まえて母の死を率直に受け入れることができました。

剖検中は「母さん、最後につらいことをさせてしまったけどほんとにありがとう」と心の中でつぶやいていました。

終わってから看護師さんたちの手で整えられた母の顔は実に穏やかで、微笑んでさえいるかのようでした。

いろいろあったけど、私を産み育ててくれて本当にありがとうございました。
あなたがいなかったら今の私は存在しなかったよ、ね。




この2週間ほどは心身ともに疲れ果ててどうにか仕事をしている状態でしたが、ようやく普段の自分に戻りつつあるのを実感しています。

これも家族や同僚の暖かい支えがあっての事です。周りのすべてに感謝しています。

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